ジャックとジルの複利の効果は、日本でも本当にあるのかな?
では、実例をもとに計算してみるね
ジャックとジルの投資話は、投資は早く始めればそれだけ複利の効果があることを説明する、とても有名な話です。
ジャックが先に8年間の投資を行うだけ。ジルはそのあと40年間投資を行いますが、総資産はジャックのほうが上になるという話です。
ただ「年利10%で増加し続ける」という前提の計算であるため「現実的ではないのでは?」という意見もあがります。そこで、ここでは検証として、実例をもとに総資産を算出してみたいと思います。
先に結論をまとめておきますと、以下のようになります。結果として、ジャックとジルの投資話のように、ジャックが上になることはありませんでした。
投資方法 | 年利 | 65歳の 2人の資産 |
---|---|---|
定期預金 | 0.2% | ジルが上 |
TOPIX | 1.7% | ジルが上 |
オルカン | 8.7% | ジルが上 |
では、これらについて具体的に説明してきます。
単利と複利について
まず、単利と複利について説明します。金利の計算方法には、単利式と複利式の2種類があります。
単利は「預けた金額」元本に対してのみ利子が付くものです。一方で、複利は、預けた金額と増えた利子を足し合わせたものに、利子が付くものです。
では、仮に預けた金額に5%の利子が付くものとして計算してみます。
単利で計算
1万円預けたとして、1年後は 10,500円、2年後は 11,000円、3年後は 11,500円、、と毎年500円の利子分が増えていきます。
複利で計算
1万円預けたとして、1年後は 10,500円、2年後は 11,025円、3年後は 11,576円、、となります。
1年後の利子は500円ですが、2年後の利子は525円、3年後の利子は551円、と、毎年預けた額が増えたものとして計算するので、それにあわせて利子の額も大きくなっていきます。
単利と複利とはでは、2年後の差が25円、3年後の差が76円と、年齢経過に伴い、指数関数的に差が広がります。
年数 | 単利 | 複利 | 金額差 |
---|---|---|---|
1年後 | 10,500円 | 10,500円 | 0円 |
2年後 | 11,000円 | 11,025円 | 25円 |
3年後 | 11,500円 | 11,576円 | 76円 |
4年後 | 12,000円 | 12,154円 | 154円 |
5年後 | 12,500円 | 12,761円 | 261円 |
ジャックとジルの投資話
では、ジャックとジルの投資話の内容をまとめておきます。
- 弟のジャックは、18歳から毎年50万円ずつの積み立て投資を8年間続け、そのあとは65歳までは追加投資を行わず、運用を続けました。(投資した合計は400万円)
- 姉のジルは、26歳から毎年50万円ずつの積み立て投資を65歳までの40年間続けました(投資した合計は 2,000万円)
投資した資産が年率10%で増加し続けたと仮定すると、65歳の時どちらが、持っている資産が多いか?ですが、資産が多いのは弟のジャックのほうです。
- 弟のジャックの資産は 2億5,878万円
- 姉のジルの資産は 2億2,129万円(3,749万円の差です)
仮にこのあと、姉のジルが65歳以上も投資を続けていても、弟のジャックに追いつくことはできません。それだけ複利の効果は大きいのです。
この物語が伝えたかったことは投資は早く始めたほうがその効果は大きいということです。
銀行の定期預金に預けた場合
では、仮に日本国内の銀行の定期預金に預けたとして、弟のジャックは8年間の投資を、姉のジルは40年間の投資を行ったものとして、計算してみます。
現在の、銀行の定期預金に預けた場合の年利は約 0.2% なので、この値で計算すると以下のようになります。
名前 | 投資元本 | 65歳時点 | 元本との比率 |
---|---|---|---|
ジャック | 400万円 | 436万円 | 1.09倍 |
ジル | 2,000万円 | 2,080万円 | 1.04倍 |
複利の効果は全く見られませんでした。また、投資した元本に対する比率も低く投資としての効果もみられないため、老後のための資産運用として考えるのは難しそうです。
TOPIX(東証株価指数)に投資した場合
次に、TOPIX(東証株価指数)に投資した場合で計算してみます。こちらの年利は 平均 1.7% なので、この値で資産運用したとします。
名前 | 投資元本 | 65歳時点 | 元本との比率 |
---|---|---|---|
ジャック | 400万円 | 833万円 | 2.08倍 |
ジル | 2,000万円 | 2,831万円 | 1.42倍 |
こちらも、65歳時点でジャックの総資産がジルを超すことはなく、複利の効果は見られませんでした。
また、老後の資金のための資産運用として考えると厳しそうです。
仮にジャックが65歳時点で2,000万円必要と考えた場合、若いうちに投資した額の2倍になるので、若い時に1,000万円準備する必要があることになります。給与が低く、結婚や子育てなどいろいろなイベントがある年齢の時にこれだけの資金を投資に回すのは現実的ではないでしょう。
オール・カントリー(オルカン)に投資した場合
次に、オール・カントリー(オルカン)に投資した場合で計算してみます。こちらの年利は平均 8.7% なので、この値で資産運用したとします。
名前 | 投資元本 | 65歳時点 | 元本との比率 |
---|---|---|---|
ジャック | 400万円 | 1億4,738万円 | 36.85倍 |
ジル | 2,000万円 | 1億5,182万円 | 7.59倍 |
こちらは、65歳時点でジルが追い越しました。ただし、ジャックは投資元本400万円に対して36.85倍になっているので複利の効果は十分得られてます。
また、老後の資金のための資産運用としては十分考えることができると思います。
仮にジャックが65歳時点で2,000万円必要と考えた場合、若いうちに投資した額の36.85倍になるので、若い時に54万2741円準備するだけでいいことになります。
これは年間67,843円です。つまり、18歳から毎月5,654円を8年間積み立てするだけでいいのです。この金額は現実的だと思います。
まとめ
ジャックとジルの複利の効果は、仮に年利10%で計算した場合はジルはジャックに追いつけませんでした。しかし、それより低い年利の場合は、そうでもないようです。
投資方法 | 年利 | 65歳の 2人の資産 |
---|---|---|
定期預金 | 0.2% | ジルが上 |
TOPIX | 1.7% | ジルが上 |
オルカン | 8.7% | ジルが上 |
また、日本の銀行の定期預金や日本のインデックス投資(TOPIX)で資産運用した場合は複利の効果はほとんど得られないことがわかりました。
そして、老後の資金目的での資産運用という視点で「ジャックの事例」をもとに、複数の投資方法において、元本との比率をまとめてみました。65歳時点で2,000万円必要と試算したの必要投資額は以下のようになります。
投資方法 | 元本との比率 | 必要な投資総額 | 1年間の投資額 |
---|---|---|---|
定期預金 | 1.09倍 | 18,348,624円 | 2,293,578円 |
TOPIX | 2.08倍 | 9,615,385円 | 1,201,923円 |
オルカン | 36.85倍 | 542,741円 | 67,843円 |
銀行の定期預金は毎年、約200万円をねん出する必要があります。そして、TOPIXの場合は毎年、約120万円が必要ということになります。18歳から毎年この金額を8年間続けると考えると、あまり現実的ではありません。
65歳以降の老後資金を意識した場合は、オール・カントリー(オルカン)など、平均年利が良いものに投資が望ましいようです。
複利の効果を得るには、年利も大事ですね